フェイスリフトの溶ける糸ってなにでできてるの?糸リフトの糸の種類を解説
公開日:2023/05/29 更新日:2024/07/11切るか切らないかという判断と同じように悩む方が多いのが、糸によるフェイスリフトの手術方法です。種類が多すぎて、しかも糸のメーカーよりもクリニックが手術の名前をつけているケースが多い為、 違う名前の手術でも同じ内容だったりと厄介です。
さて、今回のコラムですが、手術の種類はさておき(前置きしたのに)、溶ける糸ってなんで溶けるの?という素朴な疑問を調べてみようと思います。
フェイスリフトに使う【糸】の種類
まず前提として、フェイスリフトの手術に使用する糸には、溶ける糸と溶けない糸があります。これは、縫合糸と同じような分類になるので、以下、縫合糸の分類をご参考まで。
参考元:日本医療縫合糸協会
溶けない糸
非吸収性の糸。合成素材系と天然素材系がある。抜糸が必要。
また縫合部位によっては金属製の糸(ワイヤーや留め具)を用いることも。
溶ける糸
吸収性の糸。現在は合成素材系のみが使用されている。 抜糸の必要がない。軽い縫合向き。
フェイスリフトの分野で見てみると、溶けない糸の代表的なものには、スプリングスレッドと呼ばれるものがあります。
これは糸の名前がそのまま手術名になっているパターンが多いのですが、いわゆる【スプリングスレッドリフト】に用いられます。
反対に、溶ける糸の代表格は、シルエットリフトに用いられるコーン型の糸。シルエットリフトはフェザーリフトやショッピングリフトと呼ばれることもあります。
これに用いられるコーン型の糸は、皮膚の中で約1年ほどで溶けてなくなってしまいます。
この他、溶ける糸には逆さ向きに無数の棘が生えているV-APTSなどがあります。
溶ける糸は何でできているのか
さて、本題。溶ける糸とは一体どんな素材でできているのでしょうか。
縫合糸のメーカーサイトで確認してみると、溶ける糸(吸収性の合成糸)の素材には、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、カプロラクトンなどを使用していると書かれていました。いずれも生分解性ポリマーというカテゴリーの素材です。
フェイスリフト用の溶ける糸も、同じように生分解性ポリマーに特殊な形状加工をして使用しているものと判断できます。(そもそも医療に使用できる素材は限られており、新素材を使用するとなると、 変異原性試験やら、アレルギー試験やら、毒性試験やら、いろいろな関門があり簡単には使えません。)
生分解性ポリマーというと、かなりざっくりしている表現になるのですが、ポリグリコール酸という表現もかなりざっくりしています。(ポリマーとは分子量の多い有機化合物の総称です。日本語では樹脂という意味にあたり、特定の物質名を表すものではありません。)
フェイスリフトに使用する溶ける糸は、医療用への使用を許可されている生分解性ポリマーを、 メーカー独自の加工方法にて手術用の商品として開発しているのです。
形状以外の点で、縫合糸との大きな違いですが、溶けるスピードが異なります。
縫合糸の場合は、10日から長くても60日程度で溶けてなくなってしまうのに対して、フェイスリフトの糸は、1年ほど皮膚内に残るようにできています。
溶けた後はどこに行ってしまうのか
ところで、フェイスリフト用の溶ける糸はなぜ溶けるのでしょうか。
それは生分解性ポリマーの特性をみていくとわかります。
医療用生分解性ポリマー
生体内で加水分解を起こし、一定時間かけて非毒性の化合物に変化する樹脂。
簡単に言うと、皮膚内の水によって少しずつ分解していきます。そして分解した後は人体に無害のものとして、そのまま代謝されてしまいます。
イメージ的には、揚げ物を食べた時に起こる消化吸収と同じような原理です。
消化の場合は消化酵素によって油を分解しますが、フェイスリフト用の溶ける糸の場合は水分によって分解していきます。
縫合用の医療糸とフェイスリフト用の溶ける糸では、素材の配合や糸の形状によって溶けるスピードが異なっているということになります。
溶ける糸による施術方法
溶ける糸によるフェイスリフトの施術方法についてご説明します。糸は体内で分解、吸収される成分を使って作られています。そのため施術後の抜糸の必要がないんですね。
しかし、一言で「溶ける糸による施術方法」といっても、いくつかの種類があります。まず、ギザギザの切れ込みが入った糸を使った施術方法。
この切れ込みが皮膚をつかんで持ち上げる役割をするのだそうです。次にコーンと呼ばれる円錐型のひっかかりがついている糸を用いる方法。
ギザギザの切れ込みが付いている糸を使うよりも皮膚をつかむ力が強く、強靭です。この方法は、溶けない糸による施術にも用いられます。
そして、とげのようなものが付いている糸を使う方法。こちらは皮膚をつかむ力が、切れ込みが入っている糸よりも強いです。また糸を付けた細い針を刺し、針を引き抜いて糸を体内に残す方法もあります。挿入された糸が細胞を刺激して、コラーゲンなどをより作り出しやすくする効果があります。
また、針を刺すことで肌が引き締まる効果も期待できます。他にも輪っかが付いた「ループタイプ」と呼ばれる糸など、いろいろな種類の糸があります。溶ける糸によるフェイスリフトの施術方法は様々ですので、医師に相談してみると良いでしょう。
溶けない糸による施術方法
溶けない糸による施術方法についても、いろいろな種類があります。まず、「スプリングスレッド」という、伸縮性のある糸を使ったフェイスリフト。伸縮性のある糸なので、口の周りなどのよく動く部分にも使用できます。
せっかくフェイスリフトの施術を受けても、笑ったときなどに口の周りがつっぱった感じになってしまったらショックですが、伸縮性のある糸ならば、表情に合わせて伸び縮みしてくれるので安心かもしれません。
こちらには「コグ」と呼ばれる突起がついていて、1つ1つのコグが4つの方向を向いています。その数、1センチメートルあたり24個。このコグが皮膚をしっかりとつかみ、引き上げてくれます。
もちろん、先端は丸みを帯びているため、神経や血管を傷つける心配はありません。糸はポリエステル製ですが、コグはシリコン製なのでソフトな感じがします。そして、施術後の皮膚のひきつれによる頭痛などを防ぐ効果もあります。
また、溶ける糸による施術方法でお話しした、「コーン」と呼ばれる円錐型のひっかかりがついている様式は、溶けない糸でも用いられています。
まとめ
フェイスリフトに使用する溶ける糸のこと、わかっていただけたでしょうか。
ポリマー?加水分解?よくわからない!という方は、難しい話は省いていただいて、溶ける糸は1年ほどで皮膚内で溶けてなくなるということと、溶けた糸は人体に無害なものになって代謝されて消えるということだけ覚えておきましょう。
また、このコラムの読者の皆さんは既によくご存知かと思いますが、フェイスリフトにはたくさんの種類があるため、仕上がりイメージをどれだけ正確に医師に伝えられるかで、満足度が変わってきます。
溶ける糸を使用した手術は、手軽で安価なことがメリットとなりますが、やはり溶けない糸を使ったスレッドリフトの効果にはかないませんし、当然ですがメスを入れる手術とは土俵すら違うものになります。
カウンセリングを通して、しっかりと希望を伝え、 医師とのコミュニケーションを図りましょう。
※上記の記事の内容につきましては、個人差もあり、実際の施術内容と異なる場合もございます。詳細につきましては、カウンセリングの際に確認していただければと思います。
監修者:柳田 徹
- ・東京生まれ。
- ・幼少期をエジプト・カイロで過ごす。
- ・千葉県立東葛飾高校を卒業後、鳥取大学医学部へ。
大学では競技スキー部キャプテンを務める。1998年卒業。 - ・国立病院東京医療センターで外科系研修を修了。
麻酔科、救命などを学ぶ。 - ・東京医科大学形成外科に入局。
美容外科の根幹となる形成外科を基礎から学ぶ。 - ・美容外科専門クリニックにて多くの経験を重ねる。
- ・仙台と札幌で院長職を務める。
- ・Johns Hopkins Medicine International提携クリニックでエイジングケア手術担当医として勤務。
- ・2011年 恵比寿美容外科院長就任。
- ・美容、形成外科経験20年。
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