フェイスリフトの術式「リガメント法」とは?効果やメリット・デメリットを解説
公開日:2019/12/19 更新日:2025/02/06
フェイスリフト手術の中でも「リガメント法」は、より自然な効果が期待できる術式として注目を集めています。特に、頬のたるみやほうれい線に悩む方からの関心が高く、「リガメント法の効果は本当なのか」「自分に適しているのか」といった疑問を抱いている方は少なくないでしょう。
この手術法は、顔の骨と皮膚を繋ぐ「保持靭帯(リテイニング・リガメント)」に着目した術式で、医学的にも効果が実証されています。しかし同時に、手術の特性上、リスクなどのデメリットを受け入れたうえで施術を実施することになります。
そこで本記事では、ほうれい線やたるみに悩む方のために、リガメント法の基礎知識や効果、メリット・デメリットなどについて詳しく解説していきます。
目次
フェイスリフトの術式の一つである「リガメント法」とは
リガメント法の核となる「リガメント(靭帯)」は、顔の骨格と皮膚を繋ぐ重要な支持組織です。特に、頬骨部の頬骨靭帯や下顎部の咬筋靭帯は、加齢とともに垂れ下がってくる皮膚や脂肪組織(頬の脂肪パッド)を支える「杭」のような役割を果たしています。
医学的には、これらの靭帯を適切に解放し再固定することで、より自然な引き上げ効果が得られることが複数の臨床研究で確認されています。特に中顔面(頬からほうれい線周辺)の改善に効果的とされています。
リガメント法は、SMAS(スマス)という筋膜を引っ張る時に、杭となってしまう程に硬く丈夫な組織であるリガメントの特徴に着目した術式です。 リガメント法の手術では、まず皮膚を口の辺りまで大きく剥がし、リガメントも切り離して皮膚を動かしやすい状態にします。
そして、皮膚をしっかりと引き上げてリガメントを縫合し、たるみのない状態で再固定するというのが基本的な流れです。 <リガメント法イメージ> 基本的に手術は日帰りで行われますが、皮膚の剥離範囲が広いリガメント法の場合、その他の切るフェイスリフトと比べて手術時間が長く掛かります。
フェイスリフトの歴史から施術を理解しよう
ここまででSMAS(スマス)は筋膜であること、そしてSMASを含む顔の構成組織を貫く“杭”の働きをしているのがリガメントだとお話してきました。
この基礎知識を元に、次はフェイスリフトの歴史を見てみましょう。
どうして歴史を?と思うかもしれませんが、これを見ていくと2020年現在に存在するリストアップ治療を理解が非常に深まると思います。
皮膚を引き上げる手術が始まり
フェイスリフトの始まりは20世紀初頭、1900年前半と言われています。
当時の手術は、耳の前やもみあげの付近を切開し、皮膚を引っ張り上げるというもの。
先ほどお伝えしたように、一番上に、皮膚。その下に、皮下脂肪。その下に、筋膜(=SMAS)。その下に、表情筋。
という構成を取っている中で、皮膚だけに働きかけている術式でした。
しかしこれは、より深いところで改善しないと効果は薄いので、若返り治療としてはより一層の改善が期待されました。
効果が弱いとされる一方、手術の時間が短かったり、負担が少ないというメリットがあり、現代においても「プチフェイスリフト」として採用しているクリニックもあります。
SMAS(スマス)を利用した術式が確立
70年代になると皮膚より深層にある筋膜(SMAS)を利用した術式が開発されます。深い所にある筋膜に糸をかけて引き上げることで、たるみを改善する方法です。
手順としては、耳の付近から切開。SMASの上での剝離、引き上げを行います。より深い位置にある筋膜が引き上げられることで、その上にある皮膚に余りが出る形になります。
その余った皮膚を切除して、切開部分を縫合。この一連の施術は3時間程度を要しますが、40代・50代のころに気になるような程度のたるみの改善に効果が期待できます。
今なお採用されている術式で、「SMASを動かすことがフェイスリフトの基本」と言えるでしょう。そして、基礎が確立した後には更なる方法論が生み出されていきます。
より複雑な術式として生まれたリガメント法
SMAS法はフェイスラインに強いですが、80年代になると、より広範囲での改善を求められるようになります。例えば、ほうれい線の改善です。
この要望に応えるために、SMASより深いところにアプローチする方法や、SMASをより大きく動かす(引き上げる)ための方法論が考案されました。
そして、SMAS法をベースとして、より複雑な術式として開発されたもの一つがリガメント方式なのです。
再三の復習になりますが、一番上に、皮膚。その下に、皮下脂肪。その下に、筋膜(=SMAS)。その下に、表情筋。
そしてこれらを貫く“杭”の役割を果たしているのがリガメント(靭帯)です。このリガメントを一度切断することで、それぞれの層がより大きく動くようになります。
この術式はフェイスラインだけでなく法令線まで強力に引き上げることが出来ますが、顔のかなり深い所で施術を行うため、顔面を走る神経損傷のリスクが問題視されました。
もちろん歴史を重ねて安全性の面でも当時(80年代)とは比べ物にならない程、現代の技術は進歩していますが、人が行う事である以上、そういった合併症のリスクがゼロになることはありません。
リガメント法は、SMAS法をベースにより「複雑」にした術式ですが、明確に優れた術式とは言えないのはこういった理由のためです。だからこそ、2020年の今になっても「SMAS法かリガメント法か」といった議論が残っているのだと思います。
時代の雰囲気が生んだ「切らないフェイスリフト」
さて、フェイスリフトの歴史編の最後ですが、最近になって登場したのが「切らないフェイスリフト」です。
リガメント法以降、医学の世界では安全性を重視するムードがありました。またその一方で、アンチエイジングに悩む人々においては、もっと気軽で安全な施術を試しみたい、そんな雰囲気が生まれていきます。
その結果、一つのジャンルとして確立したのが「切らないフェイスリフト」です。
これは特定の治療技術を指すものではありません。切開手術ではない、既存の美容整形のメニューをフェイスリフトに当て込んだものと言えます。
例えばこれに該当するのは、ヒアルロン酸やボトックスの注射、サーマクールなどの照射、糸を使ったスレッドリフトアップ等です。これまでに紹介した手術とは全く違うもの、と言っても過言ではありません。
リガメント法にはどのような効果が期待できる?
リガメント法の特徴を詳しく知るために、まずは一般的に言われている2つの効果について考えていきたいと思います。
マリオネットラインやほうれい線に対する効果
一般的によく言われるのは、頬~口元にかけてできるマリオネットラインやほうれい線を解消できるという効果です。これらの症状は見た目の年齢や顔の印象にも大きく影響するため、当クリニックのカウンセリングでも多くの患者さんから相談を受けます。
下顎や咬筋等のリガメントを一度切り離すというメカニズムから考えて、こうした効果が得られる事は確かに納得できます。しかし、ほうれい線やマリオネットラインに対する効果として、リガメント法と当クリニックで行う恵比寿式セーフティリフトの間には、経験上からそれほど明らかな違いはないと思われます。
効果が長く持続する
リガメント法の特徴は、表層の皮膚だけでなく、SMAS層(表在性筋膜)とその下の深い層まで含めて包括的にリフトアップする点です。臨床研究によれば、従来のSMAS法と比較して以下の利点が報告されています。
- 中顔面(頬〜口元)のより自然な引き上げ効果
- ほうれい線やマリオネットラインの改善
- 効果の持続性(平均7-10年程度)
ですが、多くの患者さんとのカウンセリングを通して、リガメント法を行ったとしても必ずしも特別長持ちするわけではないという印象です。 人間の皮膚や筋肉は徐々に老化をしていくものですので、どんなに効果が長持ちすると話題の手術を行っても、術後の顔を永久的に維持できるわけではないと把握しておきましょう。
リガメント法を行うメリット・デメリット
リガメント法のメリット・デメリットは、次のように紹介される事が多いです。
リガメント法を行うメリット
メリットとして、次のような事がよく言われています。
「見た目が大幅に若返る可能性がある」
例えば、技術の高さで有名なアメリカの先生が行った手術によって、70~80代ぐらいの方が30~40代ぐらいまで若返った事例も学会で発表されています。ですから、リガメント法によってマリオネットラインやほうれい線が薄くなり、見た目が若返るというのは間違いではないと思います。
しかし、一般の患者さんが受けられるレベルのリガメント法で、ここまで大幅に若返るかというと、かなり難しいところです。ちなみに先述の例では、手術費用は数千万掛かるとも言われています。
現在、日本で行われている切るフェイスリフト手術の費用と比べると、OLや主婦といった一般の女性がリガメント法だけで大幅に若返るというのは、あまり現実的ではないかもしれません。
リガメント法を行うデメリット
この手術におけるデメリットとして術後のダウンタイムやリスクには、次のようなものがあります。
【術後のダウンタイム】
手術直後〜1週間
- 顔全体の強い腫れとむくみ
- 内出血による変色(術後1-2週間で徐々に改善)
- 圧迫バンドの装着が必要
2週間〜1ヶ月
- 腫れは徐々に軽減
- 多くの方が社会復帰可能な状態に
- まれに一時的なしびれが残ることも
【リガメント法のリスク】
- 血腫(内出血の貯留):2%未満
- 感染:1%未満
- 顔面神経への影響:1%未満
※これらの数値は一般的な統計であり、実際の発生率は術者の技術や施設により異なります。
こうした症状を挙げると、多くの患者さんが「これらのデメリットは、リガメント法ではない手術でも出るのでは?」といった反応を示されます。
ですが、その他の切るフェイスリフト手術よりも剥離範囲の広いリガメント法の場合、手術から1ヶ月ぐらいはパンパンに顔が腫れてしまうといった声もよく聞かれるのです。
また、これだけダウンタイムが長いとなると、お客様と顔を合わせる接客業や営業等の仕事をしている場合、それだけ長期間の休みが必要となるでしょう。
中には、「1~2週間でおおよその腫れが落ち着く」とする病院もある様ですが、こうしたクリニックでは早めに腫れを軽減させる目的で、術後しばらくは患者さんにフェイスバンデージというマスクの装着をお願いしている事があります。
よくある質問
よくある質問をまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
「リガメント法」とはどんな術式ですか?
リガメント法は、SMAS(スマス)という筋膜を引っ張る時に、杭となってしまう程に硬く丈夫な組織であるリガメントの特徴に着目した術式です。
一般的に効果の持続力が期待される反面、長期のダウンタイムや神経損傷等のリスクが伴います。
そのため、日々の暮らしや仕事への支障が少なく、短いダウンタイムで高い効果を求める方には、リスクの少ない恵比寿美容外科のセーフティリフトがおすすめです。 少しでも気になる方はお気軽にご相談ください。
リガメント法の手術を受けるデメリットはありますか?
リガメント法の手術におけるデメリット3つあります。
- 強い腫れが出る
- 皮下出血が多く、細菌感染の可能性がある
- 神経損傷のリスクがある
そのため、当院ではリスクの少ないセーフティリフトをお勧めしています。少しでも気になる方はお気軽にご相談ください。
切るフェイスリフトを行うなら安全性の高い施術がお勧め
たるみやほうれい線の解消法として紹介される事の多いリガメント法は、一般的に効果の持続力が期待される反面、長期のダウンタイムや神経損傷等のリスクが伴います。
また、学会で紹介された事例で数千万もの費用が掛かっている事を考えると、日本で一般的に行われているリガメント法だけで大幅な若返りを期待するのは、あまり現実的ではないでしょう。
そのため、日々の暮らしや仕事への支障が少なく、短いダウンタイムで高い効果を求める方には、リスクの少ない当クリニックの恵比寿式セーフティリフトがお勧めできます。
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※上記の記事の内容につきましては、個人差もあり、実際の施術内容と異なる場合もございます。 詳細につきましては、カウンセリングの際に確認していただければと思います。
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参考:Consideration of Facelift Methods and Facial Retaining Ligaments in Asians
参考:Correction of the nasolabial fold: extended SMAS dissection with periosteal fixation – PubMed

監修者:柳田 徹
- ・東京生まれ。
- ・幼少期をエジプト・カイロで過ごす。
- ・千葉県立東葛飾高校を卒業後、鳥取大学医学部へ。
大学では競技スキー部キャプテンを務める。1998年卒業。 - ・国立病院東京医療センターで外科系研修を修了。
麻酔科、救命などを学ぶ。 - ・東京医科大学形成外科に入局。
美容外科の根幹となる形成外科を基礎から学ぶ。 - ・美容外科専門クリニックにて多くの経験を重ねる。
- ・仙台と札幌で院長職を務める。
- ・Johns Hopkins Medicine International提携クリニックでエイジングケア手術担当医として勤務。
- ・2011年 恵比寿美容外科院長就任。
- ・美容、形成外科経験20年。
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